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はじめに
「頭の良い子」に育ってほしいと願う親は多いですよね。でも、何をどう与えればいいのか迷うことも多いのではないでしょうか。
この記事では、子どもの学力を支える脳の力と遊びの関係を手がかりに、知育玩具の選び方や家庭環境づくりのポイントをお伝えしていきます。
「頭の良い子」とは何か——学力を支える実行機能の正体

頭の良い子というと、テストで高得点をとる子をイメージしがちです。しかし近年の研究では、学力の土台として「実行機能」と呼ばれる脳のはたらきが深く関わっていることがわかってきました。実行機能とは、目標に向けて自分の行動や思考、感情をコントロールする力の総称です。
実行機能の三つの柱:ワーキングメモリ・抑制制御・認知的柔軟性
実行機能は、大きく三つの要素で成り立っています。一つ目は「ワーキングメモリ」で、頭の中に情報を保ちながら操作する力です。たとえば、先生の話を聞きながらノートをとるときに使います。二つ目は「抑制制御」で、衝動をおさえて適切な行動を選ぶ力です。授業中に思いつきで発言せず、順番を待てるのもこの力のおかげです。三つ目は「認知的柔軟性」で、考え方や視点を切り替える力にあたります(参照*1)。
この三つは互いに関連し合っています。実行機能の発達は脳の成熟だけでなく、家庭や学校での刺激にも左右されます(参照*2)。つまり、日々の環境次第で伸ばせる力だということです。知育玩具を選ぶときには、この三つの柱のどこに働きかけるかを意識してみてください。
2歳の実行機能が5歳の算数・読み書きを予測する縦断研究
実行機能は、幼いうちから学力に影響を与えることがわかっています。552人の子どもを対象にした縦断研究では、2歳時点の実行機能が5歳時点の算数と読み書きの力を予測できるかが調べられました。結果は明確で、語彙力や親の学歴、家庭の言語環境を考慮しても、2歳の実行機能は5歳の読み書きと算数の両方に対して強い関連を示しました。読み書きとの関連はβ = 0.56、算数との関連はβ = 0.79で、いずれも統計的に意味のある数値です(参照*3)。
算数・読み書きの両方と強く関連する点は注目に値します。頭の良い子の素地は、2歳の段階ですでに芽を出しているといえます。だからこそ、幼児期のうちに実行機能を伸ばす遊びや環境を整えておくことが大切になってきます。
頭の良い子はどんな遊びをしているのか——遊びと脳の発達の関係

頭の良い子は、特別な勉強をしているというより、日々の遊びのなかで実行機能を自然に鍛えている傾向があります。ここでは、遊びが学力にどうつながるのかを具体的に見ていきましょう。
遊びのなかで鍛えられる実行機能と学業成績への影響
遊びのなかには、実行機能の三つの柱を自然に使う場面がたくさんあります。たとえば、手順を覚えながら進める活動はワーキングメモリを使います。材料の数が限られている場面では、順番を待ったり衝動をおさえたりする抑制制御が必要です。答えが一つに決まらない自由度の高い遊びでは、やり方を柔軟に切り替える認知的柔軟性が育まれます(参照*4)。
実行機能を遊びや日常のなかで高める取り組みは、子どもの長期的な学力向上に役立つ可能性があると指摘されています(参照*5)。頭の良い子は、ドリルをたくさんやっているわけではなく、遊びのなかで考える力をくり返し使っているのです。
幼児期の実行機能が小学校高学年の成績を左右するRTI研究の知見
幼児期の実行機能が、その後の学力をどれくらい左右するのかを示した研究があります。RTI Internationalの研究では、5歳時点の実行機能が5年生(小学校高学年)の算数と読解力の成績を予測できることが示されました。さらに注目すべきは、5歳で算数が苦手でも実行機能が高い子どもは、5年生までに同年代の仲間と追いつくことができたという結果です(参照*5)。
また、青年期を対象にした別の研究では、実行機能が11年生・12年生(高校生にあたる年齢)の成績(GPA)に関連することが示されています(参照*1)。幼少期から青年期まで、実行機能と学力の関係は長く続くことがわかります。
知育玩具の選び方——実行機能を伸ばす五つの判断基準

実行機能を育てる遊びが大切とわかっても、どんな知育玩具を選べばよいのかは悩むところです。ここでは、教材設計の考え方と年齢別の特徴を手がかりに、選び方の基準を整理します。
「単純から複雑へ」「誤りの統制」などモンテッソーリ教材設計の原則
モンテッソーリ教育とは、子どもの自発的な活動を大切にする教育法です。そこで使われる教材には、知育玩具を選ぶうえで参考になる設計思想があります。まず「単純から複雑へ」という原則があり、一つの概念が次の概念の土台になるよう、段階的に難しくなる設計がなされています(参照*6)。
もう一つの特徴は、子ども自身が間違いに気づける仕組みです。「実践生活」と呼ばれる日常動作の活動では、子どもが自分で活動を選び、始めて、完了し、片づけるまでのサイクルを体験します。この過程で粗大運動や手先の細かい動き、目と手の協調が育てられます(参照*7)。知育玩具を選ぶとき、「段階的に難しくなるか」「子ども自身が正誤に気づけるか」「始めから片づけまで一人でできるか」「手先を使うか」「自由に選べるか」の五つを判断基準にしてみてください。
年齢・発達段階別に見る知育玩具の種類と特徴
0〜6歳は「自立への強い衝動」が特徴的な時期です。この年齢の子どもは、自分でやりたいという意欲をとても強く持っています(参照*8)。この意欲に合った知育玩具として、日常の動作を再現できるもの、たとえば注ぐ・はさむ・通すといった手指を使う道具が合います。
ヴァージニア大学の研究では、公立のモンテッソーリ教育を受けた子どもは、受けていない子どもに比べて、幼稚園の段階で読み能力・実行機能・短期記憶・社会的理解が向上していたと報告されています(参照*9)。年齢ごとに「いま、この子が自分でやりたがっていること」を観察し、その動作に合う知育玩具を選ぶのが効果的です。
知育玩具の効果を高める家庭環境のつくり方

どんなに良い知育玩具を用意しても、家庭の環境が整っていなければ効果は半減してしまいます。ここでは、子どもが集中して遊びに取り組める空間づくりと、親のかかわり方について見ていきます。
モンテッソーリ「準備された環境」を家庭に取り入れる方法
モンテッソーリ教育では「準備された環境」という考え方があります。これは、子どもが自分の目で見て、選んで、行動できる空間のことです。道具や材料は動きやケア、探究を促すように配置し、部屋は散らかりすぎない状態にしておきます。おもちゃや飾りが多すぎると、子どもは刺激に圧倒されてしまい、集中を妨げる原因になります(参照*10)。
家庭に取り入れるコツはシンプルです。知育玩具を出しっぱなしにせず、少数だけを低い棚に並べて見えるようにしてください。残りはしまっておき、定期的に入れ替えるとよいでしょう。子どもが自分で手に取り、遊び終わったら元の場所に戻せる動線をつくることが、「準備された環境」の第一歩になります。
親の関わり方と子どもの集中力・自立心の育て方
知育玩具に取り組むときの親の関わり方は、「手を出しすぎない」ことがポイントです。実践生活の活動は深い集中への入り口として機能します。子どもが自由に選び、くり返し練習できることで、内側から湧き上がるやる気に従って取り組みます。深い集中に達すると、子どもは喜びや充足感を得て、他者とのつながりも強まり、好ましくない行動が自然に減る傾向があります(参照*8)。
子どもが集中しているときは、声をかけたり手伝ったりせず、見守ることを意識してみてください。困っている様子があっても、すぐに正解を教えるのではなく、少し待つ姿勢が大切です。「自分でできた」という体験の積み重ねが、自立心の土台になっていきます。
知育玩具選びでよくある失敗と注意点

知育玩具を取り入れるとき、良かれと思ってやったことが裏目に出るケースがあります。ここでは代表的な失敗パターンと、見落としがちな注意点を紹介します。
刺激過多・年齢不適合がもたらす逆効果
よくある失敗の一つは、あれもこれもと知育玩具を買いすぎることです。おもちゃや装飾が多すぎる環境は、子どもを刺激するどころか圧倒してしまいます(参照*10)。選択肢が多すぎると、どれにも集中できなくなるのです。
もう一つは、年齢に合わない知育玩具を与えてしまうパターンです。難しすぎると子どもは挫折感を覚え、簡単すぎるとすぐに飽きてしまいます。家庭が散らかっていると感じたら、おもちゃの数を減らし、一日のリズムを整えるだけで、子どもが自由に探究するための穏やかさが生まれます(参照*10)。まずは「引き算」から始めてみてください。
メンタルヘルスへの配慮——抑うつ症状と学力低下の関連
知育玩具や学習環境だけでなく、子どもの心の状態にも目を向ける必要があります。ある研究では、思春期の早い段階での抑うつ症状が、8年後の成績(GPA)と関連していたことが示されました(参照*1)。つまり、心の不調が長い時間をかけて学力に影響しうるということです。
知育玩具をたくさん与えたり、勉強を強いたりすることで子どもにストレスがかかっては本末転倒です。遊びの時間は本来、楽しさや達成感を感じる時間です。子どもの表情や様子をよく見て、無理をさせていないかを確認する視点を忘れないでください。
おわりに
頭の良い子は、特別なことをしているわけではありません。日々の遊びのなかで「考える力」を自然に使い、くり返し鍛えています。
知育玩具を選ぶときは、段階的に取り組めるか、子ども自身が試行錯誤できるかを確かめてみてください。そして、おもちゃの数より環境の整え方と子どもの心の状態を大切にすることが、長い目で見た学力の土台づくりにつながります。
参照
- (*1) Frontiers – Longitudinal relations of executive functions to academic achievement and wellbeing in adolescence
- (*2) Frontiers – Editorial: Executive Function and Education
- (*3) Frontiers – Early Executive Function at Age Two Predicts Emergent Mathematics and Literacy at Age Five
- (*4) National Center for Montessori in the Public Sector – National Center for Montessori in the Public Sector
- (*5) Study: Preschool executive function skills to pay attention, manage time predict later math and reading achievement
- (*6) Washington Montessori School – Washington Montessori School
- (*7) E&O Montessori – PRACTICAL LIFE
- (*8) Practical Life Has Purpose!
- (*9) UVA Today – UVA-led national study finds Montessori preschool boosts learning, cuts costs
- (*10) Creating a Prepared Environment (at Home, too!)
