子育て役割の変遷を昭和から令和まで整理 モンテッソーリ教育で考えるママとパパの役割分担

子育て役割の変遷を昭和から令和まで整理 モンテッソーリ教育で考えるママとパパの役割分担

この記事のまとめ

昭和から令和にかけて、子育て役割の変遷は大きく進みました。昭和は「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業が主流でした。平成に入ると共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、令和では男性の育児休業取得率が40.5%に達しています。この記事では、昭和から令和までの流れを整理しながら、モンテッソーリ教育の視点でママとパパの役割分担を考えます。

  • 昭和は税制と社会保障が専業主婦モデルを支えた
  • 1990年代に共働き世帯が逆転した
  • 令和は男性育休が40.5%まで伸びた
  • モンテッソーリの「観察」「環境の整備」が役割分担のヒントになる

昭和の子育て 性別役割分業の時代

昭和の子育て 性別役割分業の時代

「男は仕事、女は家庭」が生まれた背景

昭和の子育て役割の変遷では、性別役割分業の背景を押さえることが重要です。

1940年に配偶者を夫の所得税の扶養控除の対象とする制度改正が行われました。1941年の「人口政策確立要綱」では1夫婦の出生数を平均5児とする目標が示され、20歳を超える女子の被用者としての就業が抑制されました。高度経済成長期には、男性正社員は長時間労働、女性は家庭で家事と育児という役割分担が定着し、子育てが終わるとパートとして働き始める形が広がりました(参照*1)。

昭和初期の平均寿命は男女とも40歳代でしたが、高度経済成長期以降に急速に伸び、1990年時点で男性75.92歳、女性81.90歳となりました(参照*2)。

つまり、長時間働く夫と家事育児を担う妻という形は、当時の制度と暮らしの条件が組み合わさって広がったものだといえます。今の子育てを考える出発点として、この背景は押さえておきたい部分です。

専業主婦モデルを支えた税制と社会保障

専業主婦モデルは、税制と社会保障の仕組みに支えられていました。

1961年の所得税法改正で配偶者控除が制度化され、税制面からも標準家族モデルが補強されました。男性正社員が長時間働き、女性が家庭で家事と育児を担う形は、この時期に社会全体で定着していきます(参照*1)。

一方で、合計特殊出生率は1975年に2.0を割り込み、その後も低下を続けました(参照*2)。

男女雇用機会均等法が施行されたのは昭和61年です。1966年生まれの世代は、幼少期に高度成長を体感し、20歳でバブル経済を迎え、25歳でその崩壊を経験しています(参照*3)。

税や社会保障で片働きが有利になっていた一方、出生率は下がり続けていました。この二つを並べて見ると、昭和のモデルがそのままでは続けにくくなる兆しが、当時からあったことがわかります。

平成の転換点 共働き世帯の逆転

平成の転換点 共働き世帯の逆転

1990年代に起きた分水嶺

平成の始まりは、子育て役割の変遷にとって大きな分水嶺でした。

1990年代は、1986年の男女雇用機会均等法施行以来、女性の就業率と共働き世帯の割合が上がり続けていた時期です。1990年には合計特殊出生率が1.57と戦後最低を記録する「1.57ショック」があり、少子化対策の検討が始まりました。1991年には日本で初めての育児休業が法律で制度化され、企業で働く人が子育てもする時代への転換点となりました(参照*4)。

昭和から令和までの流れの中で、1990年代は「男は仕事、女は家事育児」というモデルが揺らぎ始めた時期です。制度と人々の意識が、少しずつ共働きに合う形へ動き出しました。

共働き世帯と専業主婦世帯の逆転

共働き世帯は、1997年以降に専業主婦世帯を上回っています。

共働き世帯数は1980年以降に増加傾向となり、1997年以降は共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回りました。2023年時点では、共働き世帯が1,278万世帯、専業主婦世帯は517万世帯で、ダブルスコア以上の差がついています。1980年代は専業主婦世帯が約1,100万世帯で多数派でした(参照*5)。

意識面でも変化が進みました。「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と考える割合は、2000年時点で20〜29歳の30.3%、2009年時点で30〜39歳の47.0%、2019年時点で40〜49歳の73.7%と、世代を追って上がっています(参照*3)。

世帯の形と働き方の希望が、同じ方向へ動いてきたことが読み取れます。

令和のママとパパ 数字で見る現在地

令和のママとパパ 数字で見る現在地

男性育休取得率40.5%の意味

令和のママとパパの現在地は、育児休業の数字から見えてきます。

令和4年10月1日から1年間に妻が出産した男性のうち、令和6年10月1日までに育児休業を開始した人の割合は40.5%で、前年度より10.4ポイント上がり過去最高となりました。女性の育児休業取得率は平成19年度以降80%以上で推移しており、令和6年度は86.6%でした。政府は、民間企業に勤める男性の育児休業取得率を令和7年に50%、令和12年に85%にする目標を掲げています(参照*6)。

40.5%という数字は、10人のパパのうち4人が育休を取る計算です。昭和や平成の頃と比べると大きな変化ですが、女性の86.6%と並べると、まだ差があります。子育て役割の変遷がここまで進んだことを示す、ひとつの目安といえます。

家事・育児時間に残る夫婦の差

家事と育児にかける時間には、今も夫婦の差が残っています。

6歳未満の子供を持つ世帯で、夫の家事関連時間は5年前と比べて31分増えました。夫は家事時間、育児時間ともに一貫して増加しています。夫の育児時間は2001年の25分から2021年には1時間5分に、家事時間は7分から30分になりました。妻は家事時間が減少する一方で育児時間は増加傾向にあり、育児は3時間3分から3時間54分、家事は3時間53分から2時間58分と変化しています。ただし、家事時間では妻は夫の約6倍、育児時間では約3.5倍の差があります(参照*7)。

パパの家事育児は増えているものの、ママの負担は依然として重い。この数字は、育休取得率と合わせて見ると、制度が進んでも日々の分担にはまだ差が残っていることを示しています。

母親の就労と保育の受け皿

母親の就労を支えるには、保育の受け皿が重要です。

こども家庭庁の資料によると、保育所等利用定員は304万人で前年比0.6万人の減少、保育所等を利用する児童の数は271万人で前年比1.2万人の減少、待機児童数は2,567人で前年比113人の減少でした。同庁は「新子育て安心プラン」を令和3〜6年度までの4か年計画としてまとめ、女性の就業率の上昇(令和7年の政府目標:82%)に対応するため、令和6年度末までに必要な保育の受け皿を整備していくものとしています(参照*8)。

意識面でも変化が見られます。内閣府の調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」に賛成が33.1%、反対が64.8%となりました。育児の分担では、「外部サービスを利用しながら、それ以外は自分と配偶者で半分ずつ分担」と答えた割合が54.0%でした(参照*9)。

働き続けたいママを、保育と夫婦の分担の両方で支える形が、令和の姿だといえます。

モンテッソーリ教育が示す親の役割

モンテッソーリ教育が示す親の役割

「観察する」「環境を整える」大人の姿勢

モンテッソーリ教育では、「観察する」「環境を整える」ことが大人の基本姿勢です。モンテッソーリ教育は、20世紀初頭にマリア・モンテッソーリが始めた子ども中心の教育法です。

モンテッソーリ教師の心得には、環境の整備、教具や教材をはっきり正確に提示すること、子どもが環境との交流をもち始めるまでは積極的に、始まったら消極的に接すること、物を探している子どもや助けの必要な子どもの忍耐の限度を見守ることなどが挙げられています。仕事をしている子どもを尊重し、間違いはあからさまに訂正しないことも大切な姿勢とされています(参照*10)。

ポイントは「教える」より「観察する」ことです。大人はまず環境を整え、子どもが自分で動き出したら一歩引く。この姿勢は、ママとパパのどちらにも共通して求められるものです。役割を性別で分けるのではなく、子どもをどう見守るかという共通の軸として捉えることができます。

家庭で実践するモンテッソーリの基本

モンテッソーリ教育は、家庭でも取り入れられます。

家庭でのモンテッソーリの基本は、子どもが自立できる子ども向けの環境をつくること、日々の家事への参加を促すこと、意味のある実体験で好奇心と探究心を育てること、そして子どもの発達段階とペースを尊重することです。準備された環境は土台となる部分で、子どもが自分で動き、探し、学べるようにすることが目的です(参照*11)。

なお、日本におけるモンテッソーリ教育実施園の数は正確には把握されていません(参照*12)。

家庭で試すなら、まずは棚の高さや道具の置き場所を子どもの目線に合わせるところからです。共働き世帯が多数を占める今、限られた時間の中で「子どもが自分でできる仕組み」を用意することは、ママとパパ双方の負担を減らす工夫にもつながります。

令和の役割分担 パパとママの新しい形

令和の役割分担 パパとママの新しい形

「トモイク」の考え方と密室化のリスク

令和の役割分担は、夫婦だけで完結させない発想へ広がっています。

2025年7月、厚労省は記者会見を開き、父親育児推奨の中核にあった「イクメンプロジェクト」の終了を発表しました。そして新たに「トモイク(共育)プロジェクト」の始動を宣言しました。同省は、令和の子育てでは父親が参画することのマイナス影響として、夫婦だけで孤立する密室化が起こっていると指摘しました。密室化した家庭では育児うつのほか、DVや子どもの虐待のリスクも高いといいます。子育ての密室化を防ぐには、親子を孤立させず、関わる大人を増やしていくことが必要だとしました(参照*4)。

パパが育児に加わるだけでは足りず、周りの大人ともつながる。これが「トモイク」の考え方の柱です。役割を夫婦のあいだで完結させるのではなく、園や地域も含めた広い輪で捉える発想への転換といえます。

モンテッソーリ流の役割分担ヒント

モンテッソーリの考え方は、令和の役割分担のヒントになります。

家庭でのモンテッソーリでは、子どもができることは、完璧でなくてもさせることが大切だとされています。自分で服を着ること、自分で水やおやつをよそうこと、上着のファスナーを閉めることやシャツのボタンをとめることを教える。間違いは学びの一部で、大人は忍耐強く、すぐに手を出したくなる気持ちをこらえます。観察はモンテッソーリで欠かせない道具で、子どもがどう環境を使うかを見ることが重要だとされています(参照*11)。

内閣府の調査では、男性が育児・介護・家事、地域活動に積極的に参加していくために必要なこととして、職場における上司や周囲の理解を進めることが67.8%で最も高く、次いで男性自身の抵抗感をなくすことが63.1%、夫婦や家族間でのコミュニケーションをよく図ることが60.9%となりました(参照*9)。

子どもを観察するのはパパもママも同じです。夫婦で子どもの様子を話し合う時間を持つことが、令和の役割分担の土台になります。

おわりに

昭和から令和までの子育て役割の変遷を見ると、専業主婦モデルから共働きへ、そして父親が加わる形へと、少しずつ形を変えてきたことがわかります。男性の育児休業取得率は40.5%まで伸びましたが、家事と育児にかける時間には、まだ夫婦の差が残っています。

モンテッソーリ教育が示す「観察する」「環境を整える」姿勢は、ママとパパのどちらにも共通する軸になります。夫婦だけで抱え込まず、園や周りの大人ともつながりながら、子ども自身が育つ場を整える。そんな新しい役割分担の形を、家庭に合わせて少しずつ試すことができます。

参照

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